良寛の詩 即事
良寛の即事という詩を紹介します。
即事
対君々不語 君に対すれども君語らず
不語心悠哉 語らずして心は悠なる哉
帙散牀頭書 帙は散ず 牀頭の書
雨灑簾前梅 雨は灑(そそ)ぐ 簾前の梅
君と向かいあっていても君はもの言わぬ
もの言わぬままにほのぼのとした君の心よ
帙(ちつ)の散らかったままな枕べの書物
雨に打たれている簾(すだれ)のそとの梅の花
帙の・・・=帙は書物を包むケースで、厚紙に布を張ったもの。それが散らかっているのは、書物を取り出したあとの帙が放り出されたままであること。
枕べの書物=庾信の詩に「隠士 一牀の書」。また寒山の詩に「家中何の有るところぞ、唯だ一牀の書有るのみ」。
牀は「じょう」で寝床という意味です。「そう」でも変換できます。
庾は「ゆ」です。廋(そう)ではありません。寒山は寒山拾得の寒山。
(参考:東洋文庫)