夢のお祭り
電車に乗り込むと車内にボブ・ディランが立っていた。脇には通訳らしき日本人女性がいた。ディランは意外に大柄だった。鼻柱がやけにゴツい。
ディランはユダヤ人だ。本名ジンママン。詩人のディラン・トーマスから名前を取った。
乗客たちは気づかないのか、普段と変わらぬ佇まい。
オレは気づかないふりをして、ふと向こうに見えるホームのベンチを見やった。学生時代の知り合いの女性が座っていた。彼女はオレに気づくだろうか。
瞬時にして彼女の視点に変わる。マルチヴィジョンだ。車内のディランの後姿とオレが確認できた。
つり革につかまって立っている長身の学生がウォークマンに夢中でウザかったのでドア際に移動。
この時点ではまださっきの夢の続きとは気づかなかった。
なんの変哲もない駅で降りた。
気がつくとさっきの夢で通った町のはずれを歩いていたが、さっきは人っ子ひとりいなかったのに今は子どもたちが飾り付けや照明を木の枝に括りつけている。
なんだ、今日はお祭りだったんだ。ディランもこれを見に来たんだな。
小川ぞいの側道を歩いていく。雑草がいっぱい生えている。
所帯じみたオバサンが子どもとベンチに座っていた。オレの母親は所帯じみていただろうか。
いつもは閑散とした散歩コースが人でいっぱいだ。