神楽坂の坂下に本格中華の店があった。2013年というから5年気づかなかった。
自分は車いすごと理科大の路地で横倒しに倒れていた。通り過ぎる人も少ない夜中だ。カップルも知らんぷり。自分は40分も横倒しのままそこにいただろうか。
声をかけてくれる自転車に乗った青年がいた。起き上がるのに手を貸してくれた。どこかへ行くんですか?と訊いてきたので散歩だと告げた。
とりあえず突き当りまで行きますか。お願いします。青年は車いすを押してくれた。ついでだから神楽坂通りに出て、翁庵かモスバーガーに隣接する花屋さんのところに出た。
夜中は工事をしている。どっちに行きますか?外濠のほうへ渡ります。
ここで別れるつもりが押してくれる。困った。引っ込みがつかなくなった。
外堀通り沿いの歩道をずっと市ヶ谷方面に行く。やがてお濠沿いのテラスのテーブルも見えなくなったころ、自分はお濠を見たいと言った。
意外と手すりの高さは高い。心の中で苦笑いした。こりゃダメだ。
このときの心境はこのブログでも紹介した「捨吉」の主人公そのものだ。(くわしくは「捨吉」を参照されたい)
青年は自分にまとわりついた僅かな違和感を感じ取っていたようだ。
おうちに戻りましょう、と車いすをUターンさせた。
うちに帰る間、彼が41歳で中華店を経営していることなど聞いた。その店は自分が愛用していた(笑)「日高屋」の裏手にあった。
後で調べてみると「膳楽房」という立派なお店だ。41歳でこんな立派なお店を経営し、彼自身がオーナーシェフである。自分はいい歳をして何をしてるんだと思った。
ランチは1000円以下だが宴会にも利用できる本格中華の店だ。
見知らぬ自分を助けてくれた「仁」のある人だ。料理もまちがいあるまい。四川も台湾もあるということだ。
みなさん出かけてみてはどうでしょう。ランチタイムは相当混むらしいので少し時間をずらして行くのがいいでしょう。
神楽坂はとかく高飛車な商人が多いが稀にこういう良心的な経営者がいたということだ。