バーンズの詩
ロバート・バーンズ(1759-1796)はスコットランドの国民的詩人です。のちにフリーメイソンに入りました。
僅かのもので滿足し
僅かのもので滿足し、澤山あれば陽氣にし、
悲しみ心配に出會つた時には、
愚圖つく奴を叩き出す、
よい酒の杯と、古いスコットランドの歌をもて。
時には思案に暮れるけど、
人は軍人、世は戦争。
樂みは笑ふは私の資本(もとで)、
自由は絶對無上の王位。
十二ヶ月の苦しみが私の運命あらうとも、
樂しい一夜の歡樂は其を瘉して餘りあり。
斯くて旅路の終りに辿り着いたる其の日には、
誰が一體通った道の事なんかをば考へる。
盲目の機會よ、躓(つまづ)け、よろめけ、
來るなら來い、行くなら行け、えゝどうなりと勝手にせ。
安樂も來い、苦勞も來い、樂しみ苦痛(いたみ)皆んな來い、
私の最惡の言葉といふのはー「喜び迎へ又迎へる!」のだ。
(念のための注)
僅か=わずか 澤山=沢山 出會つた=出会った
愚圖=愚図 瘉(「ゆ」で変換)=ユ、イユ≒癒(「いやし」で変換)
餘り=あまり 一體=一体 機會=機会
訳者の中村為治は明治31年(1898.1.17)銀座生まれです。第一高等学校で川端康成と同級。東京帝国大学英文学科卒、ロバート・バーンズ専門家。
昭和54年にはスピノザの『倫理学』を羅和翻訳つまりラテン語和訳を行ないました。
(参考:岩波文庫)