ステファヌ・マラルメの詩
ステファヌ・マラルメ(1842.3.18-1898.9.9)の詩集の鈴木信太郎訳で紹介します。
禮
虚(むな)し、この泡沫、處女なる詩、
ただ、酒盞(さかづき)を示すのみ。
群居る人魚の、眼路(めぢ)はるか。
躍り亂れて 沈み行くごと。
船出して、 おお もろもろの
友よ、 われ はや艫(とも)にあり、
君 氣も驕(おご)り 舳(へ)
雷(いかづち)と眞冬なす浪 掻き分けて
醉(ゑひ) 艶(えん)だちて おのづから
蹣跚(まんさん)と、 船のたゆたひ憚(はばか)らず、
やをらわれ立ち この禮を獻げむ、
寂寥、 暗礁、北極星、
わが船の帆の素白(ましろ)なる
悩みを 與へし 悉皆(あらゆる)ものに。
(注)
舳(へ)=へさき 醉(ゑひ)=酔い 禮=れい、らい
獻=たてまつる 悉皆=ことごとくみな
訳は渡辺守章氏のものも刊行されています。ぼくは未見ですが、文語調と聞きました。鈴木訳も十分現代語とは離れていますが、ぜひ渡辺訳も見てみたいです。
柏倉康夫氏の研究論文も気になりますが高価すぎて手が出ません。
(参考:鈴木信太郎)