赤坂の逸話 続
S子は赤坂に80坪の家を買ってもらいます。加えて銀行の定期預金を二百万円契約しました。
銀行員は大口ゆえ新橋演舞場の切符を持参しましたが、その時、S子は女将の死後切り盛りをやっていて、女将の代わりに出かけていましたので、女中のK江が切符を受け取りました。
どこからバレたのかS子が銀行員に訊きました。
「あんた切符は?」
斯く斯く然々のたまえばK江の仕業となりK江は暇を出されました。
殿村の外泊は頻繁になり、ある夜本妻さんがS子の家に出刃包丁を持って押しかけました。殿村は二階の窓から梯子で逃げました。
S子のひと粒種の息子は慶應に入学し、そのうち赤坂の家は売ってしまいました。