昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

赤坂の逸話

 戦前か戦時中の話と思われます。芸者屋「T」の女将が女中を引き連れて、伊豆の温泉旅館へ行ったところ、玄関口で稀なる美少女を見つけました。思わず旅館の女中に訊ねました。


「ちょいと、あの子はどこの子?」
「あれは近所の領事の子で預かり子です」
「お金に糸目はつけませんから、あの子あたしに貰えませんでしょうか?」
 はじめのうちはウンと言いませんでしたが、それなりの金額を言い渡せば娘を難なく養女に引き取ることができました。


 娘十五の初々しさにS子と名付け、化粧して磨きを掛けて見直せばますますキレイと女中たちの評判もいいです。
 踊りの師匠秋波にS子を紹介しましたが、美男美女同士程なく魅かれ合い愛人となりました。
 一年後、S子は男子を産み落とし、女将に呼び戻され再び芸者となりますが、今度は銀座に事務所を持つ殿村某という金持ちが旦那になります。(つづく)

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