昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

山東京伝 ① 八被般若角文字

 山東京伝の「八被般若角文字」から冒頭部分を紹介します。


 砂の降りし時分と言へばこの頃のやふなれども、是は大昔の事なりしが、何がしと言へる長者のありけるが、一人の娘を寵愛の余り戯れニ酒の肴を入レし南京の鉢をかぶせけるが、一向に離れず遂に生まれぬ〇〇となり、その名を呼ばずたゞ鉢冠姫と呼びけるが、そのゝち継母の惡にて館えお追ひ出だされ、泣く々々惑い歩きけるぞいたわしき。
 姫「世に有人のうらやましや」
 道行にわ笠を被せる世話もなく、とんだ格好は良かりける。



 砂=火山の噴火による降灰を言う。
 南京の鉢=舶来品の磁器の染付焼。
 継母の惡=継母のいじめ。
 世に有人=世間で栄えている人。自分の境遇に引き換えて言う。



 鉢冠姫
 浮世の人
 姫は生きて恥をさらさんよりと、身を投げけれども、頭の鉢邪魔ニなりて沈みもやらず流れゐけるが、古道具屋三田尾四郎兵衛通りかゝり、結構なる鉢があると思ひ拾い上げんとしければ、美しき娘ゆへ、何にもせよまづ南京の染付ゆへ仲間銀ニ踏んでもよつぽどの値打と謀叛勝負ニさいはい子無きゆへ連れて帰りける。



 恥=鉢とかける。
 三田尾四郎兵衛=「見倒し」(古道具屋が品物を値切って買いたたくこと)をきかせた名前。
 仲間銀=同業者中で流通相場を言う。
 踏んでも=値踏みする。
 謀叛=投機的な行為を言う。




             (参考:桜楓社)

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