昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

日夏耿之介 ①

 日夏耿之介の詩を紹介します。


 煉金秘義


 「道士月夜の旅」



 小彗(こざか)しい黒猫の柔媚(じうび)の声音(こわね)
 青ざめた燐火をとぼすあたたかなその毛なみ
 琥珀にひかる雙瞳を努めて遁れたいゆゑに
 還(また) 儂(われ)は漂泊(さまよ)ひいづる門出である
 月光(つきかげ) 大地(つち)に降り布(し)き
 水銀の液汁を鎔解(とか)しこんだ天地万物の裡(あはひ)
 ああ 儂(わ)が旅(ゆ)く路は
 坦坦(たんたん)とただ黝(くろ)い



 わが魂(たましひ)は今宵(こよひ) 梟の夜のやうに健(すこや)かだ
 あまつさへ
 わが肉身(み)は なかば 壊滅(こぼた)れて
 己(おの)が自在の思索だにも礙(さまた)げえぬ


 瞳を瞰(み)れば
 爛爛(らんらん)と光りかがやき火(も)え昌(さか)り
 花いろの火焔(ほのお)を散乱(ちら)す
 雙(さう)の手は枯木(こぼく)のごとく


 透明の爪 氷柱(つらら)のやうに垂れ下がり
 黒い髪毛(かみ)のみ蓬蓬(ほうほう)と天をゆびさす
 儂(わし)は わが他人らとまたわが在国(くに)より旅立(かしまだ)ち
 いまぞ寔(まこと)にわが故郷に復帰(かへ)る


 
 ⅢⅣⅤへと続きます。それはまたの機会にしようと思います。


          (参考:日夏耿之介詩集)

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