ルバイヤート オマル・ハイヤーム
「ルバイヤート」は「四行詩」を意味するペルシア語「ルバーイ―」の複数形です。9世紀半ば以降のペルシア文学の中でペルシア語最古の詩形とされています。
マール社から刊行された『ルバイヤート』竹友藻風訳百十章のうち数章抜粋してみます。
五十四
さはれもし汝(なれ)の汝(なれ)なるあひだにも、
かたくなの地の床に、開くことなき
天(あめ)の戸に、「今日(けふ)」を眺めて空(あだ)ならば
汝汝(なれなれ)にあらざる「明日(あす)」は如何ならむ。
六十三
この水を神に生(うま)るとせばいかに、
えびかづら誰か係蹄(わな)とは瀆(けが)しえむ、
祝福(めぐみ)なり、用ゐざらめや、呪詛(のろひ)にて
ありとせば、―そこに入れたる者や誰(たれ)。
七十八
また、我ら空と呼ぶ覆(かへ)したる鉢、
その下に這ひ入りて生き死ぬものに、
手をあげて、助(たすけ)もとむるなかれ、そは、
汝(なれ)と我がごとくめぐれり、力なく。
九十八
あはれ、わがおとろふる命にそなへ、
命死ぬときには洗へ、葡萄もて。
わが骸(がら)を靑葉につつみ、よこたへよ、
人訪はぬにはあらぬ園のほとりに。
岩波文庫でもありますし、他にもいくつか翻訳は出ていると思います。
ぼくの持っているマール社のものはイラスト(装丁、挿絵)がキレイで優美。
そうはいっても1930年ごろに描かれたようですからビアズリーの影響があります。挿絵はロナルド・バルフォアという人です。
『ビリチスの歌』(鈴木、生田訳)のノトールによる挿絵に似ていますが、もう少し新しくしたような感じがします。
オマル・ハイヤームは1048年ペルシアで生まれました。『ルバイヤート』は中世ペルシアで生まれた四行詩集ということになります。
竹友藻風(1891ー1954)訳のオオマア・カイアム『ルバイヤット』は1921年に刊行されました。
19世紀にも日本人による翻訳はありますが、注目すべきは竹友藻風訳、矢野峰人(禾積)訳、森亮訳でしょう。