泉涌寺雲龍院の小松院古廟に春遊す 一休
一休宗純(応永元年1394年生まれ)の漢詩を紹介します。
泉涌寺雲龍院の小松院古廟に春遊す
定中唯有白頭僧 定中(じょうちゅう) 唯だ白頭の僧有れど
何記鑾與鳳輦曾 何ぞ鑾與鳳輦(らんよほうれん)の曽(むかし)を記せん
天上風流泉下魄 天上の風流 泉下の魄
松梢寒月廟前燈 松梢の寒月 廟前の灯
泉涌寺
雲龍院
鑾與鳳輦=雲龍院御幸
鳳輦
〈大意〉
坐禅して禅定に入っているのは白髪の僧一人で
どうして昔の雲龍院御幸など記憶しておろうぞ
天上の風流天子は今や泉下に眠る御霊となり
松の梢には冷たい月が冴え、廟前には灯がともっている
※故事にある「鸞與鳳輦 温泉の路」「鳳輦 今は泉路の信無し」の句は玄宗と楊貴妃とが温泉宮に行幸したもので、「更に馬嵬泉下の遊を遂ぐ」「知りぬ、是れ馬嵬泉下の魄」は安禄山の乱を避けて蜀に行幸する途中、馬嵬で死んだ楊貴妃を偲ぶ句。
※後小松院と玄宗皇帝を重ね合わせて吟じている。
したがって、二句めの後小松院が泉涌寺に行幸された事、を
経験豊かな白髪の老僧がどうして記憶しておろうか、この儂(一休)はよく覚えておるぞ、という意味になる。
※泉涌寺には楊貴妃観音像が祀られている。
一休は後小松院が崩御する前に召され禅要について奉答した。
結句の廟前の灯は大灯国師の禅を正伝する自己(一休)そのものである。
寒月
大灯国師
(参考:思文閣出版)