ポオル・ヹルレエヌ(ポール・ヴェルレーヌ)の詩
ヹルレエヌとくると、一瞬戸惑います。
街上零雨
巷に雨の時雨るるは
こころに涙(なんだ)下垂(したた)るにや
その心とうにそみ入りし
ものの侘びとはなにやらむ
屋宇(やのへ)に土にふり濺(そそ)ぐ
あめの淅瀝(おとなひ)しとしとと
おもひ倦(うん)じて音(ね)にきけば
しぐれのあめの侘びのうた
由なく雨の降頻(ふりし)くは
こころのそらの悒(うれひ)かな
よしなく惋(おどろ)きかこつとも
修羅の不すぢのあるまじを
怨も戀もさめはてて
やみのうつつの惆悵(うらぶれ)を
なじかはしらぬむら肝や
これぞあく趣のきはみかも
(注)
惆悵=いたむこと
日夏耿之介 譯