江戸漢詩 梁田蛻巌
梁田蛻巌(やなだぜいがん:1672-1757)はバッハやヘンデルより13歳上の生まれです。荻生徂徠より6歳下です。享保年間の時代に活躍した格調派の漢詩人です。江戸生まれですが播磨明石藩の儒官となりました。当時としては珍しく86歳まで生きました。
小姑
小姑僅十三
彗情満嬌面
梨花深院窓
低誦鶯鶯傳
(読み下し文)
小姑(しょうこ)
小姑(しょうこ) 僅(わづ)かに十三
彗情(けいじょう) 嬌面(きょうめん)に満つ
梨花(りか) 深院(しんいん)の窓
低く誦(しょう)す 鶯鶯伝(おうおうでん)
(注)
小姑=少女
彗情=頭の回転が速い表情。
梨花=白居易「長恨歌」に、悲しみに沈む楊貴妃の美しさを形容して「梨花一枝春雨を帯ぶ」とある。中唐の元稹の詩にも梨花という詩語は使われている。
鶯鶯伝=元稹が著した伝奇。才色兼備の美女崔鶯鶯と書生張生との恋愛物語。
五言絶句。押韻は十七霰。一句めは韻を踏みません。
小姑はしょうこで変換するよりこじゅうとですぐ変換できますw
(現代語訳)
文学少女
13歳の少女は賢そうな顔立ちで窓辺に佇んで
有名な恋愛小説の一節を小さい声で暗誦している。
梨の花は庭に咲いている。どうやら鶯鶯伝のようだ。
(参考:徳田武)