昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

ヘルダーリンの詩 ①

 ヘルダーリンの詩(全集に収録)は池袋ジュンク堂か神保町の二店もしくは八重洲ブックセンターだったか記憶はあいまいですが、立ち読みして衝撃を受けました。裏の値段を見て二度びっくり。


 うちに帰ってAmazonで検索してぎりぎり我慢できそうな「非常に良い」古書を買った憶えがあります。財布のひもが固い自分にとってけっこう思いきった買物でした。


 その河出書房新社の単行本は1966年初版の新装版で2007年刊行です。一時期、衝動買いしてしまったと思ったときもありましたが、テンションが下がったときなど詩編を読むと心が救われます。


 全4巻で1と2しか持っていませんが、本当は3も4も欲しいです。が、もはやプレミア価格になっていて買えそうにありません。


 少し短めの詩を紹介します。



 「ある樹に寄せて」
 わたしたちのうえに
 ほほえみながら 世界の統治者たちが永遠にかわらぬ道を進んでいた
 太陽と月と星が そして雲間にひらめき
 燃える瞬間の子らもわたしたちのまわりに飛び交った
 しかしわたしたちのうちには 天上の王たちの似姿
 わたしたちの愛の神が かれらを羨(うらや)みもせずに通っていった
 その神は きよく聖なる魂が
 銀いろにかすむ春の朝の気を吸ってしばしば溢れるとき
 そのいぶきを きらめく昼の海に
 夕映えに そして夜の波間に注ぎ込んだ
 ああ! わたしたちにかくも自由に 充実した無限の生命に包まれ
 世の煩いを忘れて人知れず 至福な夢さながらの生をおくった
 ときにはみずから満ち足り ときには遠く思いを馳せながら
 しかも心の奥底でいつもいきいきと一つになっていた
 幸福な樹よ! まだいつまでもいつまでもわたしは歌っていたい
 そして おまえのゆれる梢をながめながら消え失せたい
 しかしごらん!あそこになにかが動く 見えがくれに少女たちが歩いてゆく
 あるいはわたしの少女がいっしょかもしれない
 行かせてくれ わたしは行かずにいられないーさようなら!
 わたしを生に引きずりこむものがあって
 わたしは子どもっぽい足どりで愛らしい足跡をつけてゆくのだ
 しかし 親切なおまえをけっしてけっして忘れはしない
 永遠におまえはわたしの最愛の人の似姿でありつづけるだろう
 そしていつかその人がわたしのものとなる日が来たら
 おお! そうしたら わたしはその人といっしょにやすらおう
 優しいおまえの下に おまえは怒らずに注ぎかけてくれるだろう 蔭と香気を
 さざめく葉ずれの歌を 幸福なふたりのうえに



 
 なお全集の責任編集は手塚富雄ですが上記の詩はたまたま高岡和夫訳です。


 ちなみに岩波文庫の詩集(川村二郎訳)は出版されています。未見なのでわかりませんが、ふとしたときに文庫は便利だろうと思います。
 できれば手塚富雄の上下巻の本が新装されればよいのにと思っています。

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