昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

真紅のカーテン バルベードールヴィイ

 バルベードールヴィイは80年代後半に読んだ記憶がある。当時はバルベーが名前でドールヴィイが苗字と認識していたが、最近のwikipediaを見るとジュール・アメデ・バルベードールヴィイが正式な姓名なのでバルベードールヴィイが苗字とする、のが通説になっている。

 『真紅のカーテン』バルベー・ドールヴィリー 生田耕作訳 奢灞都館


 87年に奢灞都館から刊行された生田耕作訳の本はバルベー・ドールヴィリーの表記になっている。またタイトルも『真紅』だが、他の訳本には『深紅』とするものもある。
 いずれにしても『魔性の女たち』という短編集に収められている。これは後年文庫にもなっている。翻訳は度忘れ。
 国書刊行会から出ていた『魔性の女たち』は装丁が気に入らず、入手していたかもしれないが、手元にないので売却したと思う。

 なおLe Rideau Cramoisiは「深紅のカーテン」で、深紅は高貴な濃い赤だが同時に血も連想させる。Cramoisiは英語ではクリムゾンになるわけでキング・クリムゾンを想起する人もおられるだろう。


 少しだけ概要を述べると、


 語り手は駅伝馬車でド・ブラサール子爵(仮につけられた名で有名人らしい)と同乗した。
 雑談する中で子爵の思い出話になった。少尉のころそれはまだ17歳の青春時代真っただ中、士官学校を出たばかりの若きエリート将校でしかも童貞であった。
 ある中産階級の家に下宿するが、そのうちの美しい娘に恋心を抱く。アルベルト(アルベルチーヌ=中産階級を揶揄うような名前)という娘も18歳に満たない。
 アルベルト嬢はいわゆるツンデレであった。最初のうちは儀礼的な冷ややかな応対で少尉を迎えたが、あるときテーブルの下で手を握ってきた。少尉は驚きとともに心を奪われてしまう。
 昼間は冷たい態度のままだったが、夜みんなが寝静まったころとうとうアルベルトは少尉のベッドに忍び込んできたのだった。



 その後、話は急変して少尉は喫緊の課題を抱え込むこととなる。続きは本文をあたっていただきたい。
 地の文で「阿呆なゲーテ」と表現するところがある。バルベードールヴィイとゲーテの対極の距離を感じる。


 ちなみに『真紅のカーテン』は映画化されており、「恋ざんげ」というタイトル。アヌーク・エーメ主演女優、アレクサンドル・アスリュック監督。

 まだ見ていないが、原作でアルベルトは少尉の手を握るが、映画では足を絡ませるということだ。


 この作品は語り手とド・ブラサール子爵(語る現在は大尉)の会話が主で真実は闇だ。馬車が件の家を通りがかった時、真紅のカーテンの向こうで女性の影が動いている瞬間は怪奇であり、話の真偽さえ有耶無耶に感じないわけではない。



   (参考:『真紅のカーテン』奢灞都館)

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