三鞭酒(シャンペンしゅ) 日夏耿之介
日夏耿之介詩集から「三鞭酒」という作品を紹介します。
三鞭酒ー又は流火の歌
良後(あたらよ)の天床(ふしど)に於ける片破星(かたわれぼし)は
夥しくこぼれし三鞭酒(シャンペンしゅ)の一滴にすぎず
微星(ぬかぼし)らの声音(こわね)を好む
神経質の笑ひにて
其存在を精密に高度(かうど)に知覚すべければ
詼諧(くわいかい)よ 衝動よ 慟哭(どうこく)よ 歓呼(くわんこ)よ
房心(ぼうしん)楽しみ快飲するとき
屡(しばしば)声高く叫ぶなり
快く目醒(さ)ましき凄壮の奇襲戦よ
醱酵せる焮衝(きんしょう)よ 跛足(はそく)の悲嘆よ 地上讃美よ
爾(なんじ)の小賢(こざか)しき毛髪と
快く熟眠せる四̪肢と戯謔好(ぎぎゃくずき)の黒瞳(こくどう)とを嘉(よみ)ず
爾 何を思索するもよし喋言するも亦よし
いで黄金杯(わうごんはい)高くかかげ
われらが片破星らを頌(ことほ)がむ
(参考:思潮社)