七五三
昭和32年の11月は七五三でぼくは3歳でしたので、親戚のHさんのおうちに遊びに行きました。
Hさんのおうちは本郷にありました。長男Kちゃんと次男Sちゃんは従兄に当たります。Kちゃんはちょうど7歳でSちゃんは4歳でした。
彼らのお父さん、つまり伯父ですが、カメラの趣味があってこの時も写りの良い記念写真が残っています。たぶんブローニー版だったと思います。白黒ですからちょうど成瀬己喜男の映画のようにトーンのキレイな写真です。伯父さんは戦時中シベリアで抑留されていました。
ぼくはベレー帽をかぶって黒いヴェルヴェット生地の上っ張りに厚地のズボン姿でした。記念写真を見ると母がげっそり痩せています。おそらく嫁姑の問題があったのだと思います。
Kちゃんは小学1年生です。制服ではありませんが、上下のスーツのようなパリッとした格好です。 伯父さんはSちゃんにもカメラを向けます。ぼくは少し離れたところに立っていましたが、顔を斜めに出してSちゃんと一緒に写るようにしました。その瞬間のことは57年経っても昨日のように憶えています。
伯父さんはSちゃんを撮りたい、ぼくはぼくで一緒に写りたい、だけど露骨にSちゃんのところに駆け寄っては伯父さんの意図にそぐわないだろう、と瞬間思ったので遠慮気味に顔を出したつもりです。写真を見てみると、Sちゃんはソッポを向いていて、その横に顔を斜めに出したぼくもちゃんと写っていました。
Sちゃんはハンチング帽をかぶっていました。このころはまだハンチングが普通に流行っていたんだと思います。月光仮面(昭和33~34年)の悪役にもハンチングの由というのがいました。