昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

夏日閒詠   梁川(張)紅蘭

 梁川紅蘭は梁川星巌の妻です。中国風に張紅蘭とも名乗っていました。19世紀初めの生まれで、文政七年(1824)の21歳作の「夏日閒詠」を紹介します。



   夏日閒詠       夏日閒詠
 倦抛鍼線慵重理   倦みて鍼線を抛(なげう)ちて 重ねて理するに慵(ものう)し
 汗珠透衣睡方起   汗珠(かんしゅ) 衣に透(とお)りて 睡りより方に起く
 沙焦金鑠午逾熱   沙焦(すなこ)げ 金鑠(と)け 午(ひる)逾(いよ)いよ熱す
 可憐園卉乾欲死   憐れむ可し 園卉(えんき)乾きて 死せんとするを
 際晩稍稍生涼颸   晩に際して 稍稍(しょうしょう) 涼颸(りょうし)を生ず
 一痕初月細如眉   一痕(いつこん)の初月(しょげつ) 細きこと眉の如し
 抹麗花開香把盈   抹麗花(まつれいか) 開きて 香り把(は)に盈(み)つ
 簪向鬢辺雪離披   簪(かざ)して 鬢辺(びんぺん)に向(おい)て 雪離披(りひ)たり


 鍼線=針と糸。


 汗珠=玉なす汗。


 沙焦=砂を焼く、非常に熱いこと。


 金鑠=熱されて金がとけるほど暑いこと。


 稍稍=次第に。


 生涼颸=涼しい風が吹く。


 一痕初月=空にかかった三日月。三日月はしばしば細くひいた眉に喩えられる。


 抹麗花=茉莉花。モクセイ科の常緑低木。


 盈把=手のひらいっぱい。

 離披=花が咲きみだれ、その花びらがこぼれかかるようす。



 〈現代語訳〉
 針しごとにも飽きて放り出してしまうと、めんどうでもう一度手にとる気になどなれない。
 うたた寝から覚めたところで、汗がじっとり着物ににじんでいる。
 昼ともなると沙をあぶり、こがねを溶かさんばかりにいよいよ暑くなりまさり、庭の草木がからからになって枯れてしまいそうなのが可哀相でならない。
 日暮れに近づいてようやく涼しい風が吹き始め、眉を描いたように細い三日月が空にぽつんとかかった。
 ほころんだ茉莉花(まつりか)の甘い香りが、たおった手いっぱいにあふれる。鬢のあたりにかざしてみると、雪のように白い花びらがこぼれかかる。



       (参考:岩波書店)

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