京都 糺森納涼 中島棕隠
文政二年、稀代の風流儒者中島棕隠(そういん)は友人の梅辻春樵ら四人と糺の森(ただすのもり)の納涼床に遊んでいます。
立秋を過ぎたとはいえ、まだ残暑きびしい旧暦七月十六日のことで、棕隠は酒を酌み交わしながら、興大いに乗って七言絶句を詠みました。
水花已老碧花愁 水花(すいくわ)すでに老いて碧花(へきくわ)愁ふ
此候歓情帰此遊 この候の歓情この遊に帰す
為許解衣過放誕 為に許せ衣を解きて放誕(ほうたん)に過ぎるを
清陰難値況清流 清陰(せいいん)値(あ)ひ難し況んや清流
蓮の花はすでに盛りを過ぎて草花も一時の精彩がない。
この季節の遊興といえば今日のこの遊びにまさるものはない。
だから着物をはだけて、くつろぎ過ぎたとしても大目に見てもらいたい。
このような涼しい木陰はなかなかあるものではない。まして清流まで添えられているとあっては。
現代の糺の森周辺は住宅街が広がっていて、森だけは残っているそうです。
(参考:人文書院)