加山雄三
小学校の放課後、中華料理店の娘Uさんと一緒に帰ったことがありました。Uさんは以前平河町あたりに住んでいたと思いますが、杉並に引っ越したというのです。のちに東急ホテルが建つところ、ちょうどそこは関東ローム層がはっきり見えるところで地層の研究者の注目する場所でしたが、その側道の坂を下りていきました。
そのころ加山雄三の「お嫁においで」が流行っていました。ぼくは歌詞があやふやだったので、歩きながらUさんに訊きました。Uさんは2番も3番も完璧に歌詞を覚えていました。
「蒼い星くず」と「夕陽は赤く」はシングル盤を持っていたので歌詞はバッチリわかります。でも新曲の「お嫁においで」はレコードも買ってないですし、テレビやラジオで聴くしか情報が得られません。
やはり女子の集中力はすごかったなぁと、というかUさんに訊けばたいがい判るだろうと予想はしていました。なぜならUさんはぼくよりだいぶ背が高く体格が良かったからです。かなり大人びていました。
赤坂見附駅に着いて彼女は地下鉄に、ぼくは一ツ木方面へ、バイバイと別れました。