ピエール・ルイス ③ ビリチスの歌
鈴木信太郎訳で「女くらべ」という『ビリチスの歌』第一部パンフィリイの牧歌の中に所収されている詩を紹介します。
女くらべ
キプリスの小鳥、鶺鴒(せきれい)よ、萌え出でる妾(わたし)たちの欲望に 合せて
歌を唄っておくれ。乙女の肉体は瑞々(みづみづ)しく、地面のやうに花に覆はれる。
妾たちのあらゆる夢に、夜は近づき 妾たち みなひそやかにそれを語らふ。
時折は、かほどまで互に違った美しさを競(くら)べ合はせる。房々としたみどりの髪や、若々しい小さな乳房や、青春が鶉(うづら)のやうにまるまると、柔毳(にこげ)の羽根に裹(つつ)まれて蹲(うづくま)る状(さま)や。
昨日も、かういふ艶(つや)くらべを 歳上のマラントオと競うたが、一月のうちに みるみる大きくなった 胸に 姉さんは大得意。そして妾ののっぺりとした軽衣(チュニック)を指し、小さな赤ちゃんと妾を呼んだ。
そこで一人の男にも見られることなく、乙女たちの前で 二人は裸になった。そして、たとへば姉さんが 或るところでは優れてゐても、他のところで妾の方が、ずっと女になつてゐた。キプリスの小鳥、鶺鴒よ、萌え出でる妾たちの欲望に 合せて歌を唄っておくれ。
この詩をフランス語で朗読したものが見つかりました。
LES CHANSONS DE BILITIS - Les comparaisons
Les comparaisons「女くらべ」をカトリーヌ・ドヌーヴが朗読しています。
同じ詩を二度、朗読していますが、これを書きながら(聴きながら)気づいたのは、前半はドヌーヴで後半はデルフィーヌ・セイリグに違いないということです。(うっかり見落としていました。ドヌーヴとセイリグと記載されていました。)
以前ドヌーヴのCDも持っていましたが、速すぎて無味乾燥な感じを受けたのでいろいろ試し聴きする中、セイリグは気に入って今でもCDを所有しています。
ドヌーヴとセイリグは正反対なタイプの女優ですが、映画「ロバと王女」で共演したことがあります。DVDは持っています。ジャック・ドゥミ監督でジャン・マレー、ジャック・ペラン出演といった新旧美青年共演もファンの注目度が高いでしょう。
(参考:鈴木信太郎)