Guillaume Apollinaire ギョーム・アポリネールの詩
アポリネールの「雨が降る」を紹介します。
雨が降る
降ってくるのは女たちの声 思い出の中でさえ死んでしまっているかのように
君たちもまた降ってくる 僕の人生の素敵な出会いの数々 おお雨粒よ
そして竿立ちになったあの雲が不意にいななく 耳に迫る街という街全体に
お聞き 雨は降っているのだろうか 悔いとさげすみが昔の音楽を惜しんで泣く間にも
お聞き きずなが落ちてくる 上からも下からも君を引き止めるきずなが
カリグラムとはアポリネールの考案した独特の書法で、詩のテクストの文字を、その内容にふさわしい図形に配列したものです。本篇は窓ガラスに伝う雨の滴を描き出しています。
この詩はプーランクが歌曲にしています。
『カリグラム』における図形状の文字配置など、抒情性と方法的前衛性、句読点廃止とが融合したアポリネールの詩は、新しい絵画や詩の保護者的役割を果たしました。
第一次大戦で負傷し、療養中にスペイン風邪で死亡しました。
ギョーム・アポリネール(1880-1918)
「雨が降る」詩集『カリグラム』(1918)所収。翻訳安藤元雄。
(参考:フランス名詩選)