昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

柏木如亭の訳詩

 柏木如亭(1763年江戸生まれ)は江戸後期の詩人ですが、唐や宋の詩を江戸っ子言葉で訳した人です。自身も『木工集』なる漢詩集を出版しています。父親が大工の棟梁で如亭自身も職を継いだからです。


 水南          張遂初


 荻花風起釣舟寒
 楓樹江辺葉半丹
 可惜年々明月夜
 漁家只作等閑看


 (読み下し文)
 荻花 風起こりて釣舟(てうしう)寒し
 楓樹江辺(ふうじゅかうへん) 葉半ば丹(あか)し
 惜しむ可し 年々明月の夜
 漁家(ぎょか)只だ等閑(とうかん)の看を作(な)す


 「如亭訳」
 荻花(をぎ)の風起(うはかぜ)釣舟(つりぶね)も寒いころ
 江辺(かはゞた)の楓樹(もみぢ)の葉は半(はんぶん)は丹(あか)くなった
 年々(まいとし)こんな明月夜(いゝつきのけしき)を
 漁家(れふし)は等閑(うっかりし)た看(こと)に只作(してゐ)る可惜(おしいことだ)


 (注)
 張遂初=未詳
 荻花=荻は水辺に自生するイネ科の多年草。秋にススキに似た花穂をつける。
 うはかぜ=上風。草木などの上を吹く風。
 江辺=川のそば
 等閑=なおざり。おろそか。(「なおざり」で変換できます\(^o^)/)



 自分にとって読み下し文も如亭訳も同じぐらい難しさを感じますが、江戸語の一端を見るようで非常に興味深いです。


 柏木如亭の漢詩はまだ馴染みがないですが、江戸っ子による江戸弁の漢詩があるんだと思うと機会があったら読みたいと思いました。


 また如亭によるグルメルポルタージュのような本(『詩本草』)もあるようです。


                 (参考:訳注聯珠詩格如亭著 揖斐高校注)

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