江戸漢詩 美人の半面
秋山玉山(1702-1763)の漢詩を紹介します。
美人の顔半分が見えたという詩です。
無題 秋山玉山
美人下空階
猶掩氷紈扇
忽被軽風吹
容易見半面
五言絶句です。
韻は扇と面です(去声十七霰)。一句めは韻を踏みません。三句めは転句です。
「読み下し文」
美人 空階(くうかい)を下る 猶お 氷紈扇(ひょうがんせん)を掩(おお)う
忽ち 軽風に吹かれて 容易に 半面(はんめん)を見る
(注)空階=人のいない階段。 氷紈扇=斉国に産する氷のように透き通って清らかな白い練り絹のうちわ。 忽=たちまち。 被=受け身の助字。
「現代語訳」
美人は人のいない階段を下りるのにも、なお氷のように清らかな紈扇で顔を掩(おお)い隠している。が、ふっとそよ風に扇が吹き動かされて、たやすく顔半分が見えた。
(参考:岩波書店)