ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 続
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は楽団によってだいぶ印象が違います。
以前ここでハンガリア四重奏団のことを書きました。月光仮面を想起させると。
そのときもVegh四重奏団の話は出てきたと思いますが、2013年ごろですか全集のボックスが出ていたんですね。現在でもCD量販店で購入可能のようですが、アマゾンではオリジナルジャケットの場合や廉価盤の中古でも1万円を越えます。
Veghの70年代のもののほうが音的には温かい感じがして好きです。第1ヴァイオリンのVeghの音程にふらつきはあるものの、内声部の充実もあり、全体的な雰囲気は抜群です。50年代のはすっきりした演奏で、これはハンガリア四重奏団の50年代と共通しますが、ファンは多いようです。
Beethoven Quartet no.13 op.130 1st movement part 1 (1/8) The Vegh Quartet 1974 stereo (second cycle)
Vegh四重奏団の場合、50年代も70年代も小津安二郎の映画を想起させます。「東京物語」「晩春」「麦秋」の三部作ですか、笠智衆とか原節子が出ていた映画です。あのゆるやかな時間の流れを、Vegh四重奏団による緩徐楽章に見出せます。ちなみにぼく個人としては「麦秋」が一番好きです。
Vegh四重奏団はハンガリア四重奏団ほどか細くなく、ブダペスト四重奏団ほど骨太ではないけれど、内声部の充実が小津の映画に漂っている時間とか心象風景と共通のものを感じさせます。
ハンガリアの昭和30年代の港区も好きですが、Veghの昭和20年代30年代の鎌倉っぽさも捨てがたいわけです。ハンガリアが月光仮面だと失礼に当たるなら、さしずめ成瀬己喜男の映画「流れる」とかどうでしょう。あれは確か昭和31年の柳橋あたりだったと思います。
ブダペストも聴き直しましたがやはりリアリズム映画がお似合いという印象を持ちました。
ズスケ四重奏団やゲバントハウス四重奏団のCDも試聴しました。そつのないお手本のような演奏です。自分からは買いませんがくれると言うならもらっておいて損はないと思いました。