祖母の茶箪笥
急に昔のことを思い出しました。赤坂表町の家で祖母は茶箪笥を愛用していました。その茶箪笥は居間にあったのですが、ぼくがまだ3歳ぐらいでしょうか、昭和32年ごろです。
茶箪笥の上半分は左右のガラスの引き戸がありました。右側だけを半開きにして、下の右側の引き出しも少し出して右足を乗っけて「チンチン!発車!オーライ!」と喋っていました。
チンチンというのは都電の車掌さんが鳴らす鈴です。チンチン電車って言いますね。だけど茶箪笥はチンチンといわないので口で言うのです。
上半分の右側に総の付いたもうひとつの小さい扉がありました。ドアノブに総が付いている感じです。その総を持って軽く揺さぶるしぐさをして「チンチン」と口ずさむのです。小さい扉の中は飾りの小物が入っていたかもしれません。
いつも同じように、上半分の右側のガラスの引き戸を半分開けて右肩をちょこっと入れるのです。これは、車掌が窓から肩を出して指差し確認する動作を真似たつもりです。実際は車掌は車両の左側にいますから左肩ですが。
上半分の左側は天の川を模したような棚板が渡っていました。
下は左が引き戸で右は三段の引き出しでした。一番下にやや大きめの引き出しが左右にあったかもしれないです。
今これを書きながらネットで検索してみました。似たものがあります。意外に安く入手できますね。祖母の茶箪笥は祖母が亡くなった数年後引っ越しの際処分しました。思い出に残っている茶箪笥を持って行きたかったけれどスペースが無かったのです。
両親が死んでも泣かないのに祖母が亡くなった時は泣きました。あの世とメールのやりとりが出来たらどんなにいいでしょう。