神経衰弱
小林秀雄の講演をYouTubeで見た。
以前は、小林に対して偏見を持っていた。細面でインテリで女にモテただろうに。富永太郎や中原中也と知り合いで中也の恋人を寝取った銀流しぐらいに思った。
著作を読んだら大事なところは疑問符にして誤謬を免れる文章にしている。ちゃんとした学者じゃないし、作家でもないし評論家でもない。まして思想家でもない。
富永太郎みたいな夭折した美少年とも違う。
でもYouTubeを見たら、江戸弁で下町の町人や職人みたいな調子で喋っている。ヘタな落語より面白い。観客の多くはインテリの学生だろう。思わず笑わされている。
こういう口調に慣れていない学生に面白がられて不思議ではない。
小林の熱烈なファンがいるのもそのせいだろう。
昔はうつ病のことをノイローゼと言った。もうちょっと前は神経衰弱と言った。陰ではキチガイと言った。
小林は講演で「キチガイ」を連発している。マスメディアはもちろん、文字起こしも憚れるような発言だ。
70年代とはいえ学生たちも引き気味。
だけどオレは気に入った。高っ調子でべらんめえでこうはっきり言われるとスッキリする。さすが神田生まれの江戸っ子だ。
それで自分のことを引き合いに考えてみた。
そうだ、オレもキチガイの一種かもしれない。大目に見ても半分キチガイだ。半キチ捕物帖。
3歳のころトランプで神経衰弱をやったら7歳の従兄と同じ枚数取ったので、お祖父ちゃんにこれはエラい子になるぞと言われた。(お祖父ちゃんは昭和35年に66歳で亡くなった)
豈はからんや、自分はこんなデキの悪い大人になってしまった。