昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

孔雀の女     ピヱヱル・ルヰス

 「孔雀の女」ピヱヱル・ルヰス  翻訳者不明


 M・ジュール・マチヱに


 身軽な孔雀たちは碧い夢の上で一人の女を追ひかける。
 白無垢。祝婚歌。飼はれた動物の羽の。


 其の孔雀たちは白い。
 羽が白いのだ。女は赤裸だ。


 孔雀たちは知った臭ひのする腰に向かって甘へるやうに追ひかける。草を啄(つひば)み背伸びして見せる孔雀たちの尾羽。彼らは女のあとに附いて行く。


 女は束の間の折れやすい靑い枝の下に姿を昏(くら)ました。孔雀たちの羽ばたく足取りは嘆息であり、愛撫である。


 彼らは星形の影の中の斯(こ)の女狩人に恋してゐる。孔雀たちは襟頸(えりくび)から腹の膨らみへ、羽のある背中へと巧みな形にできて居る。


 そして靄(もや)へと翔ぶが如く洞穴に向かって長々と滑っていく。婚礼の花の、同胞(はらから)の花のある靑い洞穴に向かって。


 其処で翼の中に混ざった、碧い髪の毛に身を委ねる。

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