昭和50年ごろでしょうか、先輩のKSさんの下宿先は東京女子大の近くでした。
KSさんのアパートに遊びに行くとレコードを聴いたりギターを弾いたり哲学書を読んだりしました。
先輩は昭和27年の早生まれで、サークルのOとかIと学年で言えば同じです。
先輩のお気に入りのレコードはペンタングルなどのブリティッシュ・トラッド系フォークです。
当時のぼくはペンタングルなど知りませんでしたから、ずいぶんと渋めが好きなんだなあと聴きながら思いました。
Pentangle - Let No Man Steal Your Thyme (1968)
先輩もアコースティックギターは一応試してみたものの、うまくならず部屋の隅にありましたので、ちょっとお借りして弾いてみました。
和製フォークのコード本を見ながら先輩も歌ったと思います。ぼくがちょっと声真似をして当時流行りの「22才の別れ」を弾き語りすると似ていると言って喜んでくれました。
泊まった夜だったかにキルケゴールの『死に至る病』を見させてもらいました。
冒頭「自己とは自己自身に関わる一つの関係である。・・・」こんな感じがしばらく続く文章でした。先輩も一応解説してくれますが、さっぱり判らず終いでした。
KSさんの実家は九州の名家で帰郷してからはビル経営とかそういう身分でした。