寺田寅彦 内田百閒 の言葉
寺田寅彦(1878.11.28-1935.12.31)
「私は猫に対して感ずるような純粋なあたたかい愛情を人間に対していだく事のできないのを残念に思う。そういう事が可能になるために私は人間より一段高い存在になる必要があるかもしれない。それはとてもできそうもないし、かりにそれができたとした時に私はおそらく超人の孤独と悲哀を感じなければなるまい。
凡人の私はやはり子猫でもかわいがって、そして人間は人間として尊敬し親しみ恐れはばかりあるいは憎むよりほかはないかもしれない。」
(『寺田寅彦随筆集』岩波文庫より)
内田百閒(1889.5.29-1971.4.20)
「生きてゐるのは退儀である。しかし死ぬのは少少怖い。死んだ後の事はかまはないけれど、死ぬ時の樣子が、どうも面白くない。妙な顔をしたり、變な聲を出したりするのは感心しない。ただ、そこの所だけ通り越してしまへば、その後は、矢つ張り死んだ方がとくだと思ふ。とに角、小生はもういやになつたのである。
(「無恒債者無恒心」福武書店より)