期友人不至 絶海中津
五山文学の代表格、絶海中津(ぜっかいちゅうしん)は1334年生まれと1336年生まれと異説が見られます。前者はwikipediaにありましたが、文献では後者になっています。一応後者が有力ではないかと思います。
絶海の『蕉堅藁』(せうけんかう)の中の「期友人不至」を挙げてみます。
期友人不至 友人を期(ま)つも至らず
許我一来尋 我れに一たび来たり尋ぬるを許し
懐君数夜吟 君を懐ひて数夜吟ず
紛々雲雨跡 紛々たり雲雨の跡
汎々去留心 汎々(はんはん)たり去留の心
山暮秋声早 山暮れて秋声早く
楼虚水気深 楼虚(むな)しくして水気深し
知音今寂莫 知音(ちいん)は今寂莫
壁上掛孤琴 壁上 孤琴を掛くるのみ
許し=約束する
吟ず=この場合、詩を吟ずることではなく、沈吟する(思いに沈む)意味。
紛々たり=相手の移り気を怨む。処を定めぬ雲や時を選ばぬ雨のようにとりとめのない在りよう。
汎々=泛々と同じ。ふわふわと浮動するさま。
孤琴を掛くるのみ=友に弾いて聞かせることもなく放置されたままの琴。
(参考:岩波書店)