次韻途中寄懐柏上人 義堂周信
義堂周信は1325年土佐の出身。61歳で南禅寺四十四世住持に任ぜられました。
京都五山南禅寺
義堂周信の『空華日用工夫集』から拾い読みしてみます。
次韻途中寄懐柏上人 次韻して途中懐を柏上人に寄す
旅客憐荘舄 旅客は荘舄(さうせき)を憐み
離人唱渭城 離人は渭城(ゐじゃう)を唱ふ
祇因頻話別 祇(た)だ頻りに別れを話(かた)るに因りて
多不快平生 多く平生を快くせず
烏鵲月中起 烏鵲(うじゃく) 月中に起こり
鶺鴒沙上鳴 鶺鴒(せきれい) 沙上に鳴く
暮雲無限好 暮雲 無限に好し
回首独含情 首(かうべ)を回らして独り情を含む
柏上人=柏堂梵意のこと。鎌倉で義堂に師事して以来その信任を得て義堂の歿後は京都相国寺と南禅寺の住持となった。
途中=旅にあること。
荘舄=越の人だったが、早くから国を出て楚に仕え富貴の身となった。
離人=肉親や旧知と別れて遠い旅に出る人は、王維の「渭城の曲」を口ずさむ。
祇だ頻りに別れを話るに因りて=生きながらの別れというものが多いために、とかく人生は楽しみのないものになる。
「烏鵲 月中に起こり~鶺鴒 沙上に鳴く」=旅愁をかき立てる景物。
「暮雲・・・・」=李商隠の「楽遊原に登る」詩にいう「夕陽は無限に好し、只だ是れ黄昏に近づく」を踏まえる。
京都相国寺
(参考:岩波書店)