昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

「太刀魚」  柏木如亭

 『詩本草』柏木如亭の中の「太刀魚」の記述を挙げます。



 東海に太刀魚有り。即ち閩中(びんちゅう)の帯魚(たいぎょ)なり。春夏の交、味頗る美なり。余好みてこれを啖(くら)ふ。然れども人家賤視して客に供することを屑(いさぎよし)とせず。往年、道傍(だうぼう)の小店(せうてん)に喫す。酔後、戯れに小詩を書して店小ニ(てんせうに)に与ふ。  (原漢文)


 吶喊(とっかん) 声鎖(き)えて天日麗し
 波濤 海静かなり太平の初(はじめ)
 切刀百万 沙(すな)に沈み去り
 一夜東風 尽(ことごと)く魚と作(な)る  (原漢詩)


 太刀魚=形刀に似て長く、うすく、背青く腹白し。海鰻に似て薄扁青色、上に白を帯び雲母(キラ)を塗るが如し。熬(い)るべく炙(あぶ)るべく、その肉は白脆にして味美なり
 閩=中国福建省の古名。     
 帯魚=長さ丈余、鱗無くして腥(なまぐさ)し。諸魚中最も賤しき者にして、客に献ずるに以て俎(まないた)に登らず。
 賤視=草稿傍注「ヤスクシテ」
 弗屑供客=弗(不)。進んで客に出そうとはしない。
 往年=草稿傍注「前年」
 小店=ここは街道の茶店をいう。
 店小ニ=茶店の使用人


 吶喊=戦いの鬨の声。
 天日=太陽
 一夜東風尽作魚=蘇軾(そしょく)の梅花二首「一夜東風石を吹いて裂く」を意識している。



 太刀魚は食べたことがないのですが、生では生臭く煎(炒)ったり、炙ったりすれば美味しいということでしょう。


 詩のみは『如亭百絶』(『今四家絶句』所収)にも収められています。

 『四家絶句』



          (参考:岩波書店)

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