江馬細香の漢詩
江馬細香の42歳の、文政十一年(1828)の作。
題竹
玉立湘江碧 玉立(ぎょくりつ)す 湘江(しょうこう)の碧(みどり)
逢人写数枝 人に逢いて 数枝(すうし)を写す
流伝如有後 流伝(るでん)せば 後有(のちあ)るが如し
不必恨無児 必ずしも児無きを恨(うら)まず
青々と水をたたえた湘江のほとりにまっすぐ立つ清らかな竹の姿。人に会ってその数枝を描いてさしあげた。
私の描いた画(え)が伝われば、子孫があるのと同じこと。子どもがいないのを恨めしく思うことはないわ。
五言絶句。枝・児(上平声四支)。『湘夢遺稿』上。
(注)
玉立=竹のまっすぐのびたようすをいう。
湘江=いにしえの聖天子舜(しゅん)が南巡して客死したとき、堯の娘で舜の妃であった娥皇と女英は湘江のほとりまで来て嘆き悲しみ、その二人の流した涙で竹がすべてまだらになったという。
流伝=世間に伝わる。 有後=後は後をつぐ子孫。
頼山陽が評して「真情実話。之を読まば涕(なみだ)を攪(と)る」と言う。
(参考:福島理子)