「ロミオとジュリエット」風な漢詩
「ロミオとジュリエット」風な漢詩を作った人がいました。
中野逍遥という人です。1867年生まれなので夏目漱石と同じ歳です。28歳で亡くなりました。
思君
訪君過台下
清宵琴響揺
佇門不敢入
恐乱月前調
(読み下し文)
君を訪(と)いて 台下(だいか)を過ぐ
清宵(せいしょう)琴響(きんきょう) 揺らぐ
門に佇(たたず)みて あえて入(い)らず
月前(げつぜん)の調べを乱さんことを恐る
(現代語)
君を訪ねて、駿河台の屋敷の下を通り過ぎる。
すがすがしい宵のひととき、君の弾く琴のゆったりした音色が響いている。
門のところでたたずんでいるだけ、家に入っていくなんてとてもできないよ。
恐いんだ、月に照らされた君の演奏を乱したしまうのが。
中野逍遥は南条貞子という人に片思いしていました。貞子は田山花袋の友人の姉です。田山花袋の初恋の相手も貞子だったそうです。
ただ逍遥は告白することなく亡くなったので当の貞子は知らなかったそうです。
逍遥は病没ということですが、想像ですが、けっかくかもしれません。
上の詩のロミオ役は自分ですが、告白もできなかったのですから妄想の詩です。
駿河台は御茶ノ水の駅から神保町方面の地域を指します。病院、書店、楽器店、カザルスホール、画廊喫茶、カフェ、CD屋、カレー屋、立ち食いそば店など若者でにぎわう街です。
明治のころはどうだったのか?屋敷とあるので閑静な住宅街もあったのかもしれません。
(参考:森岡ゆかり)