料亭回り
祖母は信用金庫に勤めていました。新規契約と集金で赤坂じゅうを回って歩いていたと聞いています。商店、料理屋、料亭を中心に巡っていたようです。
料亭Cの大女将Mさんは稀代の政治家Tと引き揚げてきた、と祖母から聞きました。ただこれは確かな話かどうか疑問が残ります。
Tの妾Sの娘さんが書いた本によると、Tは兵役で負傷して戦時中帰国した、とあります。飯田橋で新事業を始め神楽坂の芸者を妾にしたそうです。これは既成事実でしょうね。この芸者さんはSさんとは別人です。神楽坂の近くのマンションにも表札が数年前まで出ていました。引き揚げてくる時にMさんも一緒だったかどうかまでは判りません。
もっともTは赤坂の料亭Cにも足繁く通っていたようですから、懇意ではあったのでしょう。Cの大女将Mさんよりも女将Mさんのほうが先に亡くなりました。
祖母が料亭Cに行くと、どうぞどうぞと食べ物を出されます。「今〇〇さんで蕎麦をいただいて来たのでお腹いっぱい」と言っても聞いてくれません。いくら健啖家の祖母でも出された料理を目を白黒させながら食べたそうです。