昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

「夜の蝶」京マチ子 山本富士子

 「夜の蝶」という大映昭和32年の映画を見ました。だいぶ以前テレビで放映されたのでVHSで録画したのを楽しんでいましたが、やっとDVDも安くなり改めて見てみました。
 やっぱり面白かったです。主演は京マチ子と山本富士子。どちらもバーのママです。舞台は銀座です。

 冒頭昭和32年の銀座のネオン街がカラーで写ります。けっこうそれも貴重な映像です。船越英二が橋のたもとでタバコを吸っていますが、下を流れているのは銀座川でしょうか、築地川でしょうか。女給志願の女性が船越に道を訊きます。
「あのう、ジャズ喫茶どこでしょうか?」
「ジャズ喫茶っていったってたくさんあるさ」
「カリプソっていうんですけど」
「カリプソなら・・・」


 昭和32年といえど、1957年です。戦後~1950年代はラテンが流行りました。日本ではラテン一般をジャズと呼んでいた時期がありました。だからジャズ喫茶と言っても60年代70年代のジャズ喫茶とは趣きが違ったと思います。1950年代まではラテンが流行りで生演奏が主流だったのではないでしょうか。


 船越の役はバーで働くホステスや女給の周旋をやるマネージャーみたいなものです。元はクラシックヴァイオリニストでしたが、戦争で左手を負傷しその道を絶たれました。「3人の会」の團伊玖磨、芥川也寸志、黛敏郎と同世代という設定です。


 川崎敬三も20代の若者で出演しています。川崎は学生時代六本木のクリーニング店でバイトしていて六本木界隈で評判の美青年だったそうです。それで映画関係者にスカウトされたようです。
 花屋さんのシーンもありますが、いけばなは勅使河原霞が担当していてさりげなく「蒼風展」のポスターも店内に貼られています。
 出演陣も多彩で後年作詞家になる女優も登場します。バーの客役の中村伸郎、三津田健、小沢榮、宮口精ニとかいます。


 京マチ子と山本富士子が主演で銀座での縄張り争いをするのですが、山村聰がキーマンです。京も山本も関西出身ですからとくに山本の京都弁がすごい。実際の銀座の人はあっさりしていると思いますが、関西から乗り込んでくる人の意気込みはすごいものを感じさせます。


 船越は缶ピースを持ち歩いてどこでも缶を置いてピースを一本咥えます。ライターもあの時代のライターで火をつけて何気ないシーンですが、何とも言えない懐かしさを感じます。タバコに火をつけたり火を借りたり火をつけてやることでコミュニケーションの役割があったことを思い出させます。缶ピースは文豪のイメージがありますが、一般の人が持っていてもカッコいいなと思いました。


 映画はクライマックスからあっさり終結を迎えますが、船越の恋人だった穂高のり子が新しいママになります。この穂高のり子という女優は東映の高毬子にどこか似ていて親戚ではないかと個人的には思っています。


 音楽は池野成という人ですが、「ゴジラ」昭和29年で伊福部昭のアシスタント担当でした。現代音楽の黛敏郎の手法を受け継ぐ斬新な作法を確かに感じさせます。


 カラーはアグファフィルムを採用していますから、色合いが変わっています。日本人洋画家が油絵で日本人を描いたような感覚が出ています。昭和っぽいどぎつさとういうか、まさにレトロな絵葉書のような着色です。

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