昭和レトロな赤坂の思い出

昭和レトロな思い出を書きます。主に赤坂中心ですが、東京近郊にわたると思います。
趣味の話も書くつもりです。

カフカに似た人

 70年代、カフカとかカミュとか読むのが流行りました。当時カフカの『変身』は読みました。『審判』は映画で見た覚えがあります。『城』は後年映画ビデオで見たと思います。不条理コントのようなものでした。ただし笑えません。

 カミュは『シーシュポスの神話』とか『異邦人』を読んだ覚えがあります。60年安保や70年安保に関わった世代は『シジフォスの神話』の呼び方が馴染みがあるかもしれません。シーシュポスよりシジフォスのほうが通っぽいですね。


 当時、友人にカフカに似た人がいました。Iという人で新宿の喫茶店をハシゴして彼のポートレート写真を撮りました。薄暗い店内でNikomatに28mmレンズを付けてASA400のTri-X(モノクロ)を1600に増感設定し撮影しました。ベタ焼きを作り選定しました。彼の意外な表情の発見もあり、コマを選んで自分で引き伸ばし展示会にも出品しました。フィルムがTri-Xだったのと増感現像したので出来上がりは70年代風になりました。


 細面の彼はカフカに似ていましたが、まなざしはずっと優しく美男でした。顔立ちそのものは若いころの丸山明宏(美輪)のようでした。ただ身長は160㎝台しかなく、小柄な人でした。てっきりカフカも小柄なんだろうと思い込んでいましたが、最近182㎝あったと知ってちょっとびっくりしました。

 カフカと彼の共通点は父親からのプレッシャーが強すぎたことです。そのせいで彼は少しどもり気味でした。


 Iは特定のイデオロギーに染まってはいませんでしたが、風貌とか黒っぽい身なりをすることが多かったせいか、物書きでもないし革命分子でもないのですが、思想家のような雰囲気を醸し出していました。共通の友人Oと政治の話をすることが多かったです。Iはぼくより2歳上、Oはぼくより3歳上です。

 カフカやカミュの話になってそういえばIはカフカに似ているとOとぼくはどちらからともなく言い出しました。


 三人で喫茶店で会ったとき、OとぼくとでIの顔のデッサンをしようということになりました。エンピツでクロッキーのような絵です。ぼくは子どものころから漫画家志望でしたから多少絵は描けます。Iがぼくのデッサンを見て「〇〇くん、絵うまいねぇ」と言いました。絵は彼に渡したので40年見ていません。ふと考えると彼のポートレート写真も彼に見せていなかったと今さら思い出しました。

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