朝方の缶ビール
渋谷区東に住んでいたころはやさぐれた感じでした。真夜中に隣りの部屋の住人が大音響でジャズを鳴らしてきました。負けじとこちらも大音響でジャズをかけます。
あちらがサックス入りのカルテットなら、こちらはゲイリー・バートン・クインテットのシンコペーションや変拍子の多い曲をかけます。あちらの部屋の入口にはこれ見よがしに雪駄が置いてありました。
夜中眠れない日は、朝5時になるのを待って通りのコンビニに出かけます。サンドウィッチを買ってコンビニの脇の自動販売機で缶ビールを一本買います。サッポロ黒ラベル500mlが定番でした。すでにあのころ夜11時から朝5時まで自動販売機は休止でした。
部屋に戻ってサンドウィッチを頬張りながらビールを飲む、これが何とも言えない安らいだ気分とやさぐれ感がありました。
今日はあまりビールは飲みたくないという日は、スプライト1リットル瓶入りを一本買います。あの緑色の瓶です。
だいたいそのままゴロンと寝てしまいます。
ある日、部屋で寝ているとき夢を見ました。夏「小淵沢」の駅を降りて田舎道をハイキング気分で歩いていました。向こうから白い日傘を差したご婦人が歩いてきました。すれ違いざま見てみると、顔が絵の具で塗ったみたいに真っ青でした。しかもその人は女優の高峰三枝子でした。
ぼくは飛び起きました。何とも変てこりんな夢ですが、背中にびっしょり冷や汗をかいていました。不吉な雰囲気がありましたので結局部屋は退去しました。