荒木経惟 アラーキー
友人Nが知り合いのコネで新宿二丁目のスタジオで写真展を開きました。昭和52年か3年ぐらいだったと思います。知り合い同士みんなが集まり、パーティーみたいにラジカセでジャズとか流して一杯飲みながらワイワイやっていました。
土台、素人さんが見に来るような写真展じゃありませんでした。
ひょっこり荒木経惟が現れました。入ってくるなりNのところに来て「いやあ、おめでとう」と言いつつ、握手を求めました。Nは当時アマチュアですし一面識もなく戸惑いながらも握手に応じました。もちろんあのアラーキーだってことは知っていました。
Nにしてみればアラーキーに胡散臭さを感じていたようです。
写真展初日も終わり、近くの居酒屋でみんなで祝賀ムードで呑みました。深夜喫茶で話し込み終電も過ぎたので、どうしよう、しょうがないから高円寺とか荻窪まで行って友人の下宿に泊まろうということになりました。
暗い中、新宿から先輩後輩入り混じり9人ぐらいでゾロゾロ歩きました。そのときに上った話題で覚えているのは、荒木は本物か偽物かという議論です。インチキ臭いけど本物だと断固言い張るKさん(本名Hさん)と、いや偽物だと言う後輩に意見は真っ二つに分かれました。この後輩は木村伊兵衛賞を取りました。
後から考えれば、Nは外見は突っ張っていますが意外とミーハーですから、有名写真家に握手を求められて緊張してしまったというのがホントのところかもしれません。
ちなみに「エイプリルフール」のLPジャケット写真を撮影したのは荒木経惟(当時は会社員)でしたが、胡散臭いと反発を感じたのは松本隆だと柳田ヒロがラジオで語っていました。