高橋是清公園に逃亡
明日から幼稚園に通うという晩になって急に母親から「もう、おねしょしちゃダメよ」と言われました。
それまで全然しつけが為されていないのに急にです。
明朝おねしょしました。
母親は裁断に使う黒くて大きな太刀ばさみを持ち出し、
「おちんちんを切ってやる」と言い出しました。
これは大変だと思って縁側を伝って玄関の脇から門の外に裸足で逃げ出しました。
夢中で走って、気づけば高橋是清公園に逃げこんでいました。公園の奥のほうはちょっとした林です。そこにじっとして母親に見つからないように、陽が傾くまで隠れていました。
もう一生家には帰れないんだな、と思いました。
でもちょっと家の様子を見に行こうと思って、夕方でしたが、公園の奥の階段を下りて路地に出て、ドイツ文化会館の道を魚屋Gの方へ小走りに行きました。
薬研坂に出ました。八百屋やパン屋を横目で見ながら、そーっと表町の路地を覗いてみました。誰も歩いていません。
印刷屋のKさん、Yさん、Sさん、Y子ちゃんの家の前を通って草月のアトリエやIさんちの路地のところを無事に通りました。もうすぐ我が家。
家に着きましたが、玄関からは入れません。裏木戸をそーっと開けて家の中に入りました。