「星の王子さま」と「捨吉」
『星の王子さま』を初めて読んだのは昭和40年ころで国語の授業で扱った。女性の担任の先生が得意げに目新しい読み物をずいぶん熱心に読み解いていった。
授業があまりに長いので子ども心に奇を衒っているように感じられ反発を覚えた。といってもうわばみが象を飲みこむところばかり印象に残り、その後のことはさっぱり忘れてしまった。
数年前、新しい翻訳が出たというので読んでみた。『小さな王子』というもので元の「星の王子さま」というタイトルは内藤濯の意訳であり映画でキャッチなタイトルをつける感覚と似ていることが判明。
確かにル・プチ・プランスが原題だから星は出てこない。本文を読めば星であるのは分かるからそれで星がつくことになる。
王子は皇太子という意味とはニュアンスが違い、君主に近い意味合いだそうだ。小さな星の君主である。星が小さいことと子どもであることを掛けてあるわけだ。
この物語は各惑星の一人芝居に寓意的な内容を読み解く傾向は少ない。大人として生きていくことの難しさを感じるばかりである。
1980年代に小石川図書館で貸し出したレコードの中にラジオドラマ「捨吉」があった。芥川比呂志が語り手であり主人公のような人物、捨吉役は女優さんか声優さんが演じた。これはやけに印象深かった。
芥川のナレーションのような一人語りと捨吉の対照的なキャラクターは本当に境遇も対照的。死を覚悟した語り手は山を彷徨ううちに捨吉という自分の歳も分からない子どもと出会うのだ。
捨吉と何気なく交わす言葉の中に自分の半生を振り返って死を思いとどまるのだが、だからと言って寓意的な教えとか啓示的なものより詩的な心象のほうが個人的には感銘を受けた。
原作の『捨吉』作:三好十郎は青空文庫で読めるし短編なので一読をおススメする。ラジオドラマとほとんど変わらないと思う。ラジオドラマの音声は入手できないと思われる。
長くなりそうだし、注入の時間なので、つづきは次のブログで。
(参考:青空文庫『捨吉』)